こんにちは!TOSHIです。
「iDeCoとNISA、どっちがいいんですか」
ご相談でよく聞かれます。どちらも税制の優遇がある制度なので、迷うのは当然だと思います。
ただ、この2つは似ているようで、性質がかなり違います。 そして、その違いが一番はっきり出るのは、始めるときではなく受け取るときです。
先に結論をお伝えします。
- NISAは、受け取るときも税金がかかりません。 これが最大の強みです
- iDeCoは、受け取るときに課税されます。 税金がなくなるのではなく、払う時期が先に延びる制度です
- iDeCoは、掛金がその年の所得から引かれます。 ここはNISAにはない利点です
- iDeCoは60歳まで引き出せません。 使い道が限定されます
- 2026年1月から、iDeCoの出口の扱いが変わりました
順番に見ていきます。
1. 3つの場面で比べる
制度を比べるときは、入口・途中・出口の3つに分けると整理できます。
【図1:iDeCoとNISAの違い】
入口:掛金を出すとき
iDeCoは、掛金の全額がその年の所得から差し引かれます。
所得が減るので、所得税と住民税が減ります。これはその年に確定する、目に見える効果です。
NISAには、この仕組みがありません。 投資したからといって、その年の税金が減ることはありません。
途中:運用している間
どちらも運用益は非課税です。 ここは同じです。
通常の課税口座なら、運用で得た利益に20.315%の税金がかかります。この税金がかからない点は、両制度に共通しています。
出口:受け取るとき
ここが最大の違いです。
NISAは、いくら増えても、売却したときに税金がかかりません。
一方、iDeCoは課税対象です。 受け取り方によって、退職所得控除または公的年金等控除が使えますが、控除の枠を超えた分には税金がかかります。
2. iDeCoは「非課税」ではありません
ここを誤解されている方が本当に多いので、繰り返します。
iDeCoは、税金がなくならない制度です。 掛金を出すときに引かれた税金は、受け取るときに戻ってきます。課税の繰り延べと呼ばれる仕組みです。
ではなぜ得なのか。理由は3つあります。
① 税率が変わる可能性がある
現役時代の所得が高いときに控除を受け、所得の下がる老後に受け取れば、適用される税率が下がることがあります。
② 控除の枠がある
退職所得控除や公的年金等控除の範囲内に収まれば、実際には税金がかからずに済みます。
③ 運用益への課税が先送りされる
課税されないまま運用が続くので、その分が再投資されます。
逆に言えば、控除の枠を超えると課税されます。 残高が大きくなるほど、出口の税金を意識する必要が出てきます。
3. 2026年1月から、出口の扱いが変わりました
会社員の方に関わる変更です。
従来は「5年ルール」と呼ばれる取り扱いがあり、iDeCoの一時金を受け取ってから5年空けて退職金を受け取れば、それぞれに退職所得控除を使えました。
2026年1月1日以降に受け取る分から、この期間が10年に延びました。
正確には、退職金を受け取る年の前年以前9年内にiDeCoや企業型DCの一時金を受け取っていると、退職所得控除の重複分が調整されます。
60歳でiDeCoを一時金で受け取り、65歳で退職金を受け取る。 この受け取り方は、以前より税負担が増える可能性があります。
退職金のある会社にお勤めの方は、受け取る順番と時期を考える必要が出てきました。
4. 個人事業主と会社員では、出口が違います
あまり語られませんが、iDeCoの出口は個人事業主のほうが有利です。
理由は単純で、退職金がないからです。
退職所得控除を、iDeCoの一時金だけに使えます。会社員のように、退職金と枠を取り合う必要がありません。
計算例:個人事業主の場合
前提条件
- 個人事業主、iDeCo加入期間30年
- 受け取り時の残高1,500万円
- 会社からの退職金はなし
退職所得控除の計算
800万円 + 70万円 ×(30年 − 20年)= 1,500万円
税引後
1,500万円 − 1,500万円 = 0円
全額を受け取っても、税金はかかりません。
計算例:会社員の場合
前提条件
- 勤続35年、退職金1,800万円
- iDeCo加入期間30年、残高1,000万円
- 同じ年に両方を受け取る
退職所得控除の計算
加入期間と勤続年数が重なる場合、長いほうの年数で計算します。
800万円 + 70万円 ×(35年 − 20年)= 1,850万円
税引前
受取合計 1,800万円 + 1,000万円 = 2,800万円 課税対象 (2,800万円 − 1,850万円)÷ 2 = 475万円
税引後
所得税 475万円 × 20% − 427,500円 = 522,500円 住民税 475万円 × 10% = 475,000円 合計 約99万7千円
※復興特別所得税を除いた概算です。
同じ1,000万円のiDeCoでも、立場によって出口の税金がまったく違います。
5. iDeCoは60歳まで引き出せません
これは制度の設計上の制約です。
途中で解約してお金を出すことは、原則としてできません。転職しても、収入が減っても、教育費が必要になっても、引き出せません。
老後資金として囲い込む仕組みなので、使わずに済む余裕資金で行うのが前提になります。
NISAは、いつでも売却して現金化できます。 売却した分の非課税枠は翌年に復活します。
ここは、生活の余裕度によって判断が分かれる部分です。
6. 掛金の上限
NISA(2026年9月時点)
| 枠 | 年間の投資枠 |
|---|
| つみたて投資枠 | 120万円 |
| 成長投資枠 | 240万円 |
生涯の非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)です。
iDeCo(2026年9月時点)
| 加入区分 | 月額の上限 |
|---|
| 第1号被保険者(自営業・フリーランスなど) | 68,000円 |
| 第2号被保険者・企業年金なし(会社員など) | 23,000円 |
| 第2号被保険者・企業年金あり | 制度ごとに異なる |
| 第3号被保険者(扶養に入っている配偶者) | 23,000円 |
2026年12月から、この上限が引き上げられます。
第1号被保険者は月75,000円、企業年金のない会社員は月62,000円へと大きく変わります。誰の上限がいくら上がるのか、そして掛金を増やすべきかどうかは、別の記事にまとめています。
▶ 2026年12月、iDeCoの上限が上がります ── 掛金を増やすべき人、そうでない人
7. では、どちらから始めるか
NISAから始めたほうがいい人
生活に余裕が大きくない方
60歳まで引き出せない資金を作るより、必要なときに使えるお金を先に確保するほうが優先されます。
所得税を納めていない、または少ない方
iDeCoの最大の利点は所得控除です。納めている税金が少なければ、その利点は小さくなります。 扶養の範囲で働いている方などが該当します。
教育費が重い時期にある方
使えないお金を増やすより、いつでも取り崩せる形のほうが合います。
まず投資に慣れたい方
引き出せるという安全弁があるほうが、始めやすいと思います。
iDeCoを優先して考えてもいい人
所得が高く、税率が高い方
所得控除でどれだけ税金が減るかは、その方に適用される税率で決まります。
以下は2026年9月時点の税率です。
| 課税所得 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|
| 195万円未満 | 5% | 10% | 15% |
| 195万〜330万円 | 10% | 10% | 20% |
| 330万〜695万円 | 20% | 10% | 30% |
| 695万〜900万円 | 23% | 10% | 33% |
| 900万〜1,800万円 | 33% | 10% | 43% |
| 1,800万〜4,000万円 | 40% | 10% | 50% |
| 4,000万円〜 | 45% | 10% | 55% |
税率は税制改正で変わることがあります。 実際に掛金を出す時点の税率でご確認ください。この記事の数字は、あくまで2026年9月時点のものです。
住民税について
表に入れている住民税10%は、標準税率です。内訳は都道府県民税4%、市区町村民税6%で、所得の多寡にかかわらず一律です。
ただし、自治体によっては、独自の上乗せを行っている場合があります。 環境保全や災害対策を目的とした超過課税を設けている自治体があり、その場合は10%をわずかに上回ります。
また、住民税には所得割のほかに均等割があります。こちらは所得に関係なく定額でかかるもので、iDeCoの掛金を出しても減りません。 所得控除で減るのは所得割の部分だけです。
いずれも金額としては大きな差になりませんが、上の表は目安とお考えください。正確な税額は、お住まいの市区町村で確認できます。
ここでいう「課税所得」は、年収ではありません。
年収から給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除などを差し引いたあとの金額です。年収500万円の会社員の方なら、課税所得は200万円前後になることが多く、表では2段目にあたります。
年収だけを見て「自分は33%だ」と判断すると、実際とずれます。源泉徴収票の「課税される所得金額」、または確定申告書で確認してください。
同じ掛金でも、軽減される税額はこれだけ違います
前提条件
- 掛金 月2万3千円(年27万6千円)
- 1年間拠出した場合
結果
| 課税所得 | 合計税率 | 1年で軽減される税額 |
|---|
| 195万円未満 | 15% | 41,400円 |
| 195万〜330万円 | 20% | 55,200円 |
| 330万〜695万円 | 30% | 82,800円 |
| 695万〜900万円 | 33% | 91,080円 |
| 900万〜1,800万円 | 43% | 118,680円 |
※復興特別所得税を除いた概算です。
個人事業主の方は掛金の上限が高いため、差はさらに広がります。
月6万8千円(年81万6千円)を拠出し、課税所得が330万〜695万円の区分にあたる場合、1年で軽減される税額は約24万4千円になります。
ただし、ここで軽減された分が、出口で課税される可能性があることは、前の章で書いたとおりです。入口の金額だけを見て判断しないでください。
退職金のない個人事業主・フリーランスの方
出口で退職所得控除を丸ごと使えます。公的年金も国民年金だけなので、老後資金を自分で作る必要性も高くなります。
老後資金として明確に分けておきたい方
引き出せないことが、かえって利点になる場合があります。
両方やる場合の順番
どちらもできる余裕があるなら、両方が使えます。 併用に制限はありません。
その場合も、まずNISAで現金化できる資産を作り、そのうえでiDeCoに回すという順番のほうが、生活の安定という意味では無難だと思います。
8. 2027年から、子ども向けのNISAが始まります
2026年度の税制改正で決まりました。
2027年1月から、0歳〜17歳を対象とした制度が始まります。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 対象年齢 | 0歳〜17歳 |
| 年間投資枠 | 60万円 |
| 非課税保有限度額 | 600万円 |
| 使える枠 | つみたて投資枠のみ |
| 引き出し | 12歳以降は可能 |
| 18歳になったら | 成年のNISAへ自動的に移行 |
かつてのジュニアNISAは18歳まで原則引き出せず、利用が伸びませんでした。今回は12歳から引き出せる設計になっています。
学資保険を検討されている方は、選択肢として知っておく価値があります。 ただし、元本が保証される学資保険とは性質が違うので、同じものとして比べることはできません。
9. まとめ
- iDeCoは掛金が所得控除になり、NISAはならない
- どちらも運用中の利益は非課税
- NISAは受け取るときも非課税。iDeCoは課税される
- iDeCoは税金がなくなるのではなく、払う時期が先に延びる制度
- 2026年1月から、iDeCoと退職金の受け取り間隔のルールが10年に延びた
- 退職金のない個人事業主は、iDeCoの出口で退職所得控除を丸ごと使える
- iDeCoは60歳まで引き出せない
- 2027年1月から、子ども向けのNISAが始まる
「どちらがいいか」は、所得の水準、退職金の有無、生活の余裕度で変わります。万人に共通の正解はありません。
ご自身がどちらに近いか、一度考えてみてください。判断に迷うところがあれば、一緒に整理させてください。
参考
- 金融庁「NISAを知る」 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/
- 国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。税制は改正される場合がありますので、最新の内容は金融庁・国税庁でご確認ください。個別の税額については税理士にご相談ください。投資には元本割れのリスクがあります。