こんにちは!TOSHIです。
通帳や運用の画面を見ていて、ふとこう思ったことはありませんか。
「これ以上、増やさなくてもいいのかもしれない」
このブログを読んでくださっている方の中には、コツコツ積み立ててきた方も、まとまったお金を運用に回している方もいらっしゃると思います。 どちらの方にも、いつか必ず訪れる転換点があります。
それが、お金を「増やす」から「減らさない」に切り替えるタイミングです。
今日は、その切り替えをいつ考えればいいのか、そして切り替えたあとに具体的に何をするのかについてお話しします。
1. 「増やす」と「減らさない」は、まったく別の作業です

多くの方は、この2つを同じ延長線上にあるものだと考えています。
「増やす」の次に「あまり増やさない」があって、その先に「減らさない」がある。 そんなイメージです。
ですが実際にやることは、まったく違います。
| 増やす | 減らさない | |
|---|---|---|
| 主な関心 | 利回り、商品選び | 取り崩す順番、税金、時期 |
| 時間の役割 | 味方(複利が効く) | 制約(値下がりから戻る余地が減る) |
| 失敗したときの代償 | 取り返せる | 取り返しにくい |
| 判断材料 | 過去の実績 | これから使う予定 |
「増やす」の主役は商品です。 何を選ぶか、どこに預けるか。ここに関心が集まります。
一方で「減らさない」の主役は、順番と時期です。 どの口座から先に取り崩すか、いつから始めるか、毎回いくら受け取るか。 商品を選び直す話ではありません。
つまり、これまで身につけてきた判断の物差しが、そのままでは使えなくなるということです。
2. 切り替えの目安は、年齢ではなく3つの条件
「何歳から考えればいいですか」
このご質問は本当によくいただきます。
ですが私は、年齢では決まらないとお答えしています。 50代でもまだ「増やす」段階の方はいますし、40代でもう「減らさない」の設計に入ったほうがいい方もいらっしゃいます。
代わりに、次の3つの条件で考えてみてください。
条件① そのお金を、いつ・何に使うかが具体的に決まっているか
「老後のため」は、使い道が決まっているとは言えません。 「70歳から、毎月の生活費の不足分に充てる」まで決まっていれば、決まっていると言えます。
使い道が決まると、必要な時期と金額が自動的に決まります。 そこではじめて、取り崩しの設計ができるようになります。
条件② 毎月の積立額より、すでにある資産のほうが大きくなったか
積立を始めたばかりの頃は、資産の増減を決めるのはほとんど積立額です。 相場が多少下がっても、翌月の入金でならされていきます。
ですが残高が積み上がってくると、逆転します。 毎月の積立よりも、すでに持っている資産の値動きのほうが、結果を大きく左右するようになる。
この逆転が起きた時点で、考えることが変わります。
条件③ 収入が「これから増える」から「横ばい、または減る」に変わったか
これが一番わかりやすい条件かもしれません。
収入が増えていく間は、損失が出ても追加の入金で埋めるという選択肢があります。 その選択肢が使えなくなったとき、リスクの意味が変わります。
この3つのうち、2つ以上当てはまるようでしたら、「減らさない」を考える時期に入っていると思います。
なお、この3条件は私が相談の現場で使っている判断基準です。 どこかの機関が定めたものではありませんので、あくまで一つの目安としてお読みください。
3. 「減らさない」で、実際に何をするのか
では、具体的に何をするのか。 順番にお話しします。
3-1. お金を3つに分ける
まず、持っているお金を使う時期で3つに分けます。
- 近いうちに使うお金(数年以内に使う予定がはっきりしている)
- いずれ使うお金(使う時期はおおよそ見えているが、まだ先)
- 当面は使わないお金(今のところ使う予定がない)
この3つは、置き場所も、値動きの許容範囲も違って当然です。 それなのに、多くの方はこれを一つのかたまりとして見ています。
「全部で〇〇万円ある」ではなく、「近いうちに使うのが〇〇万円、いずれ使うのが〇〇万円」と分けて把握する。 ここが出発点です。
3-2. 保険で持っている資産も、同じ棚に並べる
ここは意外と見落とされている部分です。
一時払の終身保険、個人年金保険、外貨建ての商品。 これらを「保険」として、運用資産とは別の引き出しにしまっていませんか。
取り崩しの設計をするときは、保険で持っている資産も同じ棚に並べる必要があります。 どちらも、いずれ使うお金であることに変わりはないからです。

ご自身で確認できることを3つ挙げておきます。
① 年金として受け取るのか、一時金で受け取るのか
受取方法によって、税金の扱いが変わります。 契約時に決めたまま、内容を覚えていない方は少なくありません。
② 据置期間を延ばせる契約かどうか
受け取り開始を後ろにずらせる契約であれば、取り崩しの順番を組み替える余地が生まれます。
③ 解約返戻金が今いくらで、いつピークを迎えるか
これは証券や年次の通知書で確認できます。 ピークの時期を知らないまま持っているのは、資産の一部が見えていない状態です。
証券口座をお持ちでない方も、保険はお持ちだと思います。 その場合は、ここから始めていただくのが一番早いです。
3-3. 取り崩す順番を決めておく
同じ金額を受け取るのでも、どの口座から取り崩すかで手元に残る金額が変わります。
具体的に計算してみます。
【前提条件】
- 課税口座(一般口座・特定口座)に投資元本500万円
- 現在の時価が1,000万円(含み益500万円)
- ここから100万円分を売却する
【税引前】
売却額は100万円。 このうち利益にあたる部分は、含み益の割合が50%ですので50万円です。
【税引後】
50万円 × 20.315% = 101,575円
手取りは 約898,425円 となります。
一方、同じ100万円をNISA口座から引き出した場合、利益に税金はかかりません。 手取りは 100万円 です。

その差は約10万円。
これが毎年発生すると考えると、順番を決めておくことの意味がわかっていただけると思います。
※税率20.315%の内訳は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%です(国税庁「上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例」)。復興特別所得税は2037年12月31日までの措置です。個別の税務については、お近くの税務署または税理士にご確認ください。
3-4. 取り崩しを自動化するという方法があります
順番が決まったら、次は毎回の受け取りをどうするかです。
ここで問題になるのが、自分の判断です。
相場が下がった月に、「今月は売りたくないな」と思う。 逆に上がった月に、「もう少し様子を見よう」と思う。
こうして受け取りが不規則になると、計画そのものが崩れていきます。
これを防ぐために、投資信託を定期的に自動で売却する仕組みを用意している金融機関があります。 一般に「定期売却サービス」などと呼ばれているものです。
売却の方法は、おおむね次の3通りに分かれます。
| 方式 | 売却の決め方 | 受取額 | 性質 |
|---|---|---|---|
| 金額指定 | 毎回決まった金額を売却 | 一定 | 受取額が読める。ただし基準価額が下がった月ほど、多くの口数を売ることになる |
| 定率指定 | 保有口数に対し、決めた割合を売却 | 変動 | 資産が長持ちしやすい。受取額は読めない |
| 期間指定 | 最終受取年月までの回数で口数を等分 | 変動 | 使い切る時期が決まっている場合の方式 |
判断の材料は、そのお金が生活費の柱かどうかです。
毎月の生活費に組み込むのであれば、受取額が読める金額指定。 生活はほかの収入で成り立っていて、余裕資金を取り崩すのであれば定率指定。 そういう考え方があります。
ただし、金額指定には注意点があります。 基準価額が下がった月は、同じ金額を受け取るためにより多くの口数を売ることになります。 つまり、下落局面で資産の減りが早まる。 この性質を理解したうえで選ぶ必要があります。
なお、こうした仕組みの有無や、設定できる方式、対象となる口座の種類は金融機関によって異なります。 内容が変更されることもあります。 ご自身が利用している金融機関のサイトで、一度確認してみてください。
3-5. 一度に全部を動かさない
最後に、これは強調しておきたいことです。
「減らさない」に切り替えると決めたとき、その日に全部を組み替えたくなります。 ですが、それは避けたほうがいいと考えています。
切り替えを決めた日が、たまたま相場の底かもしれません。 一度に動かすということは、その一日の値段にすべてを賭けるということです。
比率を変えるのであれば、時期を分けて少しずつ。 積み立てるときに時間を分散したのと、考え方は同じです。
4. よくある3つの誤解
相談の場でよく耳にする誤解を3つ挙げておきます。
誤解① 「もう遅い」
これが一番多いかもしれません。
ですが、数字を見てみましょう。
厚生労働省の「令和7年簡易生命表」によると、65歳の平均余命は男性19.68年、女性24.52年です。 また、90歳まで生存する割合は男性26.7%、女性50.8%となっています。
65歳から使い始めるとしても、その先に20年前後。 女性であれば、2人に1人が90歳を超えるという計算になります。
運用期間がゼロになるわけではありません。 むしろ、使いながら持ち続ける期間が長いからこそ、減らさない設計が必要になります。
(出典:厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」2026年7月公表)
誤解② 「全部を預金に移せば減らない」
たしかに、預金の残高は減りません。 100万円は100万円のままです。
ですが、そのお金で買えるものは変わります。
総務省統計局の消費者物価指数によると、2026年7月分の総合指数は前年同月比で1.9%の上昇となっています。
金額が同じでも、買えるものが減っていく。 これは「減っていない」と言えるでしょうか。
(出典:総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年7月分」)
誤解③ 「元本保証なら大丈夫」
これは②と重なりますが、区別しておきたい点があります。
元本保証で守られているのは、金額です。 価値ではありません。
この2つを分けて考えられるようになると、判断の精度が上がります。
5. まとめ:まずは自分で確認できることから
長くなりましたので、整理します。
切り替えを考える3つの条件
- ① そのお金を、いつ・何に使うかが具体的に決まっているか
- ② 毎月の積立額より、すでにある資産のほうが大きくなったか
- ③ 収入が「これから増える」から「横ばい、または減る」に変わったか
2つ以上当てはまるなら、「減らさない」を考える時期です。
今日からできること
- 保険の証券を出して、受取方法と据置期間を確認する
- 解約返戻金の額と、ピークの時期を確認する
- 利用している金融機関に、定期売却の仕組みがあるか調べる
「増やす」から「減らさない」への切り替えは、後ろ向きな話ではありません。 使うために貯めてきたお金を、きちんと使い切るための準備です。
あなたの持っているお金は今、どの箱に入っているでしょうか。
一度、書き出してみるところから始めてみませんか。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品や取引の推奨を目的とするものではありません。制度や税制の内容は2026年9月時点のものです。個別の判断にあたっては、最新の情報をご確認ください。


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